東京高等裁判所 昭和51年(ネ)2576号 判決
一 当裁判所も、第一、第二製品は本件考案の技術的範囲に属しないと判断する。
その理由は、左記のとおり変更、附加するほかは、原判決理由一、二に記載するところと同一であるから、これをここに引用する。
(一) 原判決41丁表一行、42丁裏三行、44丁表一行の各「基盤裏面に」、41丁表九行「且つ」から末行「いないし、」まで、41丁裏五行「且つ」から六行終りまで、41丁裏九行「噴流パイプが」から42丁表一行「また同様に」まで、43丁表二行「基盤裏面でない個所に」をいずれも削り、41丁裏五行「おらず、」を「おらない。」に改める。
(二) 原判決42丁裏一〇行から一一行にかけての「このような装置であるから奏するという」を削り、代わりに「『……超音波と噴流が同時に或は噴流が間欠的に被処理物に作用するので、被処理物表面に附着していた空気によつて生ずる気泡および洗滌液中に溶存する気体によつて生ずる微小な気泡は噴流によつて強制的に洗滌室上方に移動させられる。従つて被処理物表面は気泡が附着せず、常に超音波が直接作用し、超音波の洗滌が一〇〇%利用でき、更に洗滌液の噴流移動が活発に行われるため、超音波の進行方向に対して死角になる室内両隅部部分は、この活発な洗滌液の移動接触により洗滌効果を高めることができる。』という」を挿入する。
(三) 原判決43丁表二行及び44丁表二行「噴流パイプ」の前に「超音波の進行方向に処理室内の液を移動させる」と各挿入する。
(四) 原判決44丁表一行「超音波発振子」の前に「基板裏面の全域に亘つて配設された複数個の超音波発振子(本件考案は、複数個の発振子を構成要件としていること及び前記作用効果を意図することからみて、少からぬ数の発振子を基板裏面全域に配設することを前提としているとみるべきである。)から発振する超音波と右発振子を挾んで設けられた噴流パイプから噴出する噴流とを併用することにより、被処理物表面に付着した気泡及び洗滌液中に溶存する気体によつて生ずる微小な気泡を洗滌液とともに上方に移動し、できるだけ外部に追払うような構成がとられ、かつ超音波の進行方向に対して死角になる洗滌室の隅部分でも活発な洗滌液の噴流移動が行われるものと解され、したがつて、噴流パイプの位置関係は控訴人ら主張のように第一、第二製品のそれと表現の違いにすぎないものではなく、」を挿入する。
(五) 原判決44丁裏四行から五行にかけての「……ことは本件考案の目的で、この目的のために」を「……ことにより、超音波を有効に被処理物の表面に作用させ、超音波洗滌効果の向上を図ることに本件考案の目的が存し、この目的達成のために」と、同丁裏六行「かかる目的」を「前記のように噴流を併用すること」にそれぞれ改める。
(六) 原判決44丁裏七行「明らかであり、」の次に、「他方、第一製品の噴出ノズルは3―1、3―2の二個で、その分岐噴出路L、R、Mはいずれも底壁面に対し約六〇度の傾斜角が付与されている(原判決48丁表三行~四行。この点は当事者間に争いがない。)から、右分岐噴出路による噴流は超音波の進行方向に対して明らかに交叉する方向に進行するものであつて、超音波の進行方向に液を移動させるものとは解されないし、また右噴出ノズル3―1、3―2は、超音波発振子40―1、40―2間と40―3、40―4間との中間位置の底壁15(洗滌槽全体からみて中央部分寄り)に配置されたもので、洗滌槽の隅部分において洗滌液の活発な移動は期待できず、結局振動子を挾んで設けられたものといえないことは勿論、底壁の全域に亘つて設けられたものでもない。また、第二製品の噴出ノズルも3―1、3―2の二個で、その各分岐噴出路のうち3―1M、3―2Mはいずれも上方に向いている(原判決54丁裏九行~一〇行。この点は当事者間に争いがない。)から、これによる噴流は本件考案の噴流パイプによる噴流と同じく超音波の進行方向に液を移動させるものといえるが、他の分岐噴出路3―1S、3―2Sはいずれも底壁面に対し約七五度の傾斜角が付与されている(原判決54丁裏一〇行~一一行)ので、右のような液の移動は行われえない。また噴出ノズル3―1、3―2は超音波発振子40―1、40―2と前壁11との間において超音波発振子に平行して底壁15に設けられているから、その間における超音波の進行方向に対して死角になる室内隅に比較的近い部分の洗滌液を被処理物表面に移動接触させることになるけれども、この噴出ノズルは超音波発振子の他側と後壁12との間には設けられていないから、同側部における超音波の進行方向に対して死角になる室内隅部分の洗滌液を被処理物表面に移動接触させるものとはいえない。したがつて、第二製品の噴出ノズルも振動子を挾んで設けられたものといえないことは勿論、底壁全域に亘つて設けられたものとも解しえないものである。そうすると、」を挿入する。
(七) 原判決45丁裏一行「……明らかである」の次に、「(なお、本件考案における洗滌作用が理論上キヤビテーシヨン作用によるものか、超音波の加速度の力によるものかについては当事者間に争いがあるけれども、そのいずれであるかにかかわらず、本件考案と第一、第二製品は技術的思想が同一とはいえないものである。けだし、本件考案は気泡を外部に放出することを目的としているのに対し、第一、第二製品も同様のことを目的としていると認めるに足る証拠はなく、かえつて前記噴出ノズルの傾斜角の存在及び後記2の事実からみて、その主たる目的は液の攪拌にあることがうかがわれるからである。)」を挿入する。
(八) 原判決45丁裏七行の前に次のとおり付加する。
「2 なお、本件考案においては処理室の上部内面に処理液を吸込ませるパイプを設けることが要件とされているのに対し、第一、第二製品では吸引口(5)が底壁(15)に穿設されているほか、オーバーフロー堰(16)が設けられているが、オーバーフロ堰は洗滌槽より液が溢流するのを受け入れるのが主目的であると解されるに対し、本件考案における吸込パイプは噴流パイプより噴出して上方に移動した洗滌液を常時積極的に吸込んで循環させるものと認められるから、両者は作用効果を異にするものであつて、控訴人ら主張のように右オーバーフロー堰をもつて本件考案における吸込パイプと均等のものとは解しえないし、また前記吸引口は、常時洗滌液を吸引して洗滌槽を循環させるものであるから本件考案における吸込パイプと対応するものと一応認められるけれども、底壁に設けられていて、洗滌槽の上部内面に設けられているのではないから、本件考案の構成要件(D)を充足する構成とはいえない。」
(九) 原判決45丁裏七行の「2」を「3」とする。
二 そうすると、原判決は正当であるから、民事訴訟法第三八四条により本件各控訴を棄却する。